リスニング

多くの日本人はそもそも英語の発音が受け取れていない

投稿日:2019-07-07 更新日:

受け取れない

 

「何度聞いても英語が聞き取れない」とリスニングで悩む人はとても多いと思います。

リスニングを上達させるにはどうしたらいいのでしょうか?
「とにかく英語を聞きまくるしかない」のでしょうか?

 

そのやり方を否定するつもりはありませんが、しかし、やみくもに英語を聞くのはあまり効率的ではありません。

 

日本人が英語を聞いたとき、聞き取れないのは、ある意味、「当然」なんです。

それは、速すぎて聞き取れない、とか、単語の意味がわからないとか、それ以前のことで、

そもそも英語の発音を「認識できていない」んです。

発音が認識できないのであれば、英語を聞き取ることができないのは当たり前ですよね?

 

それがどういうことなのか、どういうメカニズムでそうなっているのか、また、どうしたらそれを解消できるのかを説明していきます。

 

 

聞き取れない音を分析しよう

 

聞き取れない音を認識するための実験

はじめに、とある単語の発音を聞いてみていただきたいと思います。

こちらのサイト(辞書サイトのWeblio)で、スピーカーのボタンを押すと、
「リス」の意味の単語「squirrel」の発音を聞くことができます。

Weblioのスピーカーボタン

 

どのように聞こえたでしょうか?

最初の「スク」と最後の「ル」っぽい音は聞こえたかもしれませんが、その間の部分は、なんだかよくわからない音だったのではないでしょうか?

英語には、こういった、「日本人にとってなんだかよくわからない音」がたくさんあります。

 

よくわからない音の正体

先ほどの実験の、「よくわからない音」とは、いったい何なのでしょうか?
よくわからないにしても、もうすこし掘り下げて分析してみましょう。

 

ここで少しだけ考えてみていただきたいのですが、
先ほどのsquirrelに例に限らず、あなたにとって、「聞き取れない英語の音」というのはどういう音でしょうか?
自分なりに、そのイメージを言葉で表現してみてください。

人によって感じ方は違うかもしれませんが、いくつか表現の例を挙げるとすれば、それはこんな言葉になるかもしれません。

  • もごもごとした、こもったような音
  • アでもイでもウでもない、変な声
  • やたらと息の音が混じっている音

 

いろいろなパターンや表現があるでしょうが、しかし共通して言えるのは、

カタカナで書けないような音

ということではないでしょうか?

 

そう、英語には、カタカナでうまく書き表せないような発音がたくさんあるのです。

そして、カタカナで書けないということは、それは日本語には無い発音ということです。

ごく基本的なことですが、まず、この「英語には、日本語には無い発音がたくさんある」という事実を前提として考えていく必要があります。

 

日本語と英語の発音の数

「英語にはあるが日本語にない発音は何か?」と聞かれたとき、思い浮かぶのはどんな音でしょうか?

パッと思いつくのは、「th」の音や「f」、「v」の音ではないでしょうか?

しかし、それらはほんの一部で、実はほとんどの英語の発音は日本語の発音とは一致しない、(似ているものはあっても)異なる発音です。
まったく同じといえるような発音はわずかしかありません。

 

また、英語の発音は、日本語と比べて種類が格段に多いんです。

日本語の発音の種類:25種類程度

英語の発音の種類:44種類程度

このぐらいの差があります。
(この数字は、発音の分類方法やカウントの仕方によって異なってきますが、だいたいこのくらいの数です。)

 

要するに、英語の発音というのは、日本人の知らない音だらけ、ということなんです。

 

多くの日本人は、英語の発音が受け取れていない

日本語、英語で使う発音を色で例えたイメージ

英語で使われる発音の種類が日本語と比べてだいぶ多いということを説明しましたが、それを色で例えるとこんなイメージになります。

日英の発音の種類のイメージ図

 

日本語で使う発音、英語で使う発音を色で例えて表現してみたものです。
(あくまで説明のためのイメージ図であって、音の周波数などを表したものではありません。)

この図が表していることはこの2点です。

  • 英語のほうが色の種類(発音の種類)がだいぶ多い
  • 似たような色(発音)はあっても、日英でまったく同じと言えるものはほぼ無い

 

日本人が英語を聞いたときにどんなことが起っているのか

日本人が英語を聞いたとき、英語の発音はどのように聞こえるのでしょうか。

ここで、一つの重要な法則があります。

日本人は、日本語で使う発音以外は、言語として聞き取ることができない
(トレーニングなしには)

というものです。

日本語で使う発音であれば聞き取ることができますが、それ以外の音は、(雑音のような音としては聞こえますが)言語で使う音としてうまく認識できません。

簡単に言うと、「知らない発音、なじみのない発音は聞き取れない」ということです。

 

先ほどの色のイメージ図を使って説明すると、このようになります。

英語がフィルターでブロックされるイメージ図

日本語で使う発音以外は、フィルター(グレーの部分)がかかったようになって、聞き取れません。

また、聞き取れたとしても、日本語の音の中に「近い音」があれば、その音として認識してしまいます。
正しく聞き取れたと思っていても、やや強引に、日本語で使う発音に「当てはめて」認識してしまうため、正確に聞き取ったり聞き分けたりすることができていません。

 

「squirrel」の例で考えてみる

ここで、最初に行った実験の「squirrel」を思い出してみましょう。

最初の「スク」と最後の「ル」は、聞き取れたと思っていても、(多くの日本人の場合、)実は正しく聞き取れていません

  • 英語の「sq」の部分の発音と、カタカナの「スク」は、(近い音ではありますが、)同じではありません。
  • 最後の「l」の部分も、カタカナの「ル」とは全く異なる音です。

このように、日本語での近い発音に当てはめて、歪曲して受け取ってしまっています。

また、「スク」と「ル」の間の部分の「なんだかよくわからない音」は、イメージ図でいうとフィルターにブロックされて聞き取れなかった音です。

 

結果的に、日本人が英語を聞いたときの発音の認識はこの3つのパターンに分かれます。

  • 正しく聞きとれた音
  • 自分の認識できる音に(強引に)当てはめて認識した音
  • 聞き取れない音(なんだかよくわからない音)

そして、正しく聞き取れる音というのはわずかで、正確に認識できていない音が大部分を占めています。

 


 

ここまで、英語の発音は日本人にはあまり認識できていない、発音を受け取れていないことを説明してきました。

速すぎて聞き取れない、とか、単語の意味がわからないとか、そういうこと以前に、そもそも発音を認識できていないんです。

リスニングの前提として、まず、このことを知っておきましょう。

 

しかし、では日本人は英語が聞き取れるようにはなれないのかというと、もちろんそんなことはありません。トレーニングによって、聞き取れるようになります。

ですから、ぜんぜん英語を聞き取れないといって、落ち込む必要はありません。そもそも、最初はそういうものなのです。

 

発音を認識できない状況を解消するには

英語の発音を認識できていない状況を解消するにはどうすればいいのでしょうか?

課題となるのは、先ほどの図でいえば、英語の発音をブロックしてしまう「フィルター」の存在です。これをどうにかしなければいけません。

 

フィルターを打ち破れ

このフィルターによるブロックを解消するための一番効率的な方法は、

自分がその発音をできるようにすること。

つまり、発音練習をすることなんです。繰り返しリスニングする方法よりも遥かに効果があります。

 

フィルターは、自分が言語として使用している発音、慣れ親しんでいる発音はブロックしません。

英語の発音がブロックされてしまうのは、普段、言語として使用していない、慣れ親しんでいない発音だからです。

英語の発音を繰り返し練習し、慣れ親しむことで、その発音はブロックする必要のない音だと自分の脳に理解させます。

イメージ図で例えれば、発音練習を繰り返せば、フィルターに穴を開けることができるのです。

フィルターに穴を開ける

未知の音の種類を知り、発音練習する

発音練習をするにしても、どんな発音を練習すればいいのでしょうか?

英語の発音の多くは、日本人にとってなじみのない音です。

そもそも認識できていない発音なので、それは「見えない敵」のようなものです。
見えない敵を相手に、やみくもに戦ってはいけません。

 

まず、どんな発音の種類があるのか知るところから始めましょう。

先ほどの図で言えば、どんな色があるのかを知る、ということです。

 

こういう時に役に立つのが、「発音記号」です。

発音記号は、英語の発音を分類し、記号化したものです。

発音記号について、ここでは、「どんな種類があるか」のみ紹介しますが、以下のようなものがあります。

 

発音記号(母音)

ʌ æ ɑː əː ə ai au i
u e ei ɔ ɔː ɔi ou

 

発音記号(子音)

p b t d k g f v
θ ð s z ʃ ʒ ʧ ʤ
h l r w j m n ŋ

 

発音記号についてより詳しくは、こちらの記事で記載しています。

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英単語に併記されている謎の記号の正体とは?発音記号の重要性を解説

  英語の学習をしているときに、辞書や単語帳に、こんな記号が書かれているのを見たことはありませんか? Webl ...

 

発音記号の種類を学習し、それぞれの発音を練習することで、英語の発音を聞き取る力を大きく伸ばすことができます。

 

発音記号と発音を学習するための書籍にはいろいろありますが、定番となっている本はこの「英語耳」です。

それほど厚い本ではありませんので、ひとまず発音記号の種類と発音の概要を理解するだけであれば、割と短期間で済んでしまいます。

 

まとめ

  • 英語で使われる発音は、その種類が日本語と比べてずっと多く、また、日本語の発音とまったく同じと言える発音はほぼ無い。
  • 日本人にとって、日本語で使う発音以外はブロックされてしまうため、英語の発音の多くは正しく認識できていない。
  • 発音の認識をブロックするフィルターは、発音練習によって解消できる。
  • 発音記号で発音の種類を学び、個々の発音を練習することで、英語の発音を聞き取る能力を伸ばせる。

 

発音を「聞き取る能力」と「発音できる能力」とは表裏一体の関係にあります。

英語の発音を知り、練習することで、リスニングにおいても大きく前進できるでしょう。

 

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