英語の学習をしているときに、辞書や単語帳に、こんな記号が書かれているのを見たことはありませんか?
この、アルファベットのような、しかしアルファベットとは異なる謎の記号。
「なんだろうなぁ」と思いつつもスルーしてしまっている人が多いのですが、実はこれ、英語を学習する上でとても重要な記号なんです。
この記号の正体は「発音記号」とよばれるもので、単語の発音を表現したものです。
一言で言えば、「英語におけるフリガナ」に相当するものです。
この発音記号がどういったものでどう役に立つのか、そして、発音記号をマスターしておくことがどういう重要性を持つのかについて説明していきます。
発音記号とは
英単語のつづりと発音にはある程度の関連性があります。
英語の学習を重ねていくうちに、つづりを見ただけで何となくその単語の発音が予想できるようになっていくものですが、
しかし、その予想は、当たることもあれば当たらないこともあり、結局のところ、その単語の発音が実際どうなのか知りたければ、調べるしかありません。
では、ある単語の発音を知りたいとき、それを調べるにはどんな手段があるでしょうか?
- 英語の先生に発音してもらう
- CDなどでネイティブが発音している音源を聞く
- 英語辞書サイトで検索し、発音を再生する
といった方法があるかと思います。
しかし、発音記号に習熟していれば、音声を聞かなくても、辞書に記載されている記号を見ただけでその単語の発音を正確に知ることができます。
このように、単語の発音を調べるときに役に立つのが「発音記号」です。
発音記号の種類
発音記号は、アルファベットに似た数十種類の記号で記述されています。
記号の種類にどんなものがあるのかを見てみましょう。
なお、発音記号に使われる記号の種類や数は、書籍によって微妙に異なり、一様ではありません。以下に示すものも、これが絶対というものではありませんので、一つの例としてとらえてください。
母音
ʌ | æ | ɑː | əː | ə | ai | au | iː | i | iə |
u | uː | uə | e | ei | eə | ɔ | ɔː | ɔi | ou |
子音
p | b | t | d | k | g | f | v |
θ | ð | s | z | ʃ | ʒ | ʧ | ʤ |
h | l | r | w | j | m | n | ŋ |
辞書に表記されている発音記号を見てみよう
発音記号は、辞書でその単語を調べると、単語の近くに、カッコ [ ] やスラッシュ / などで囲まれる形で表記されています。
例えば、thinkを辞書で調べると、
[θíŋk]
または
/θíŋk/
のように表記されています。
また、辞書だけでなく、単語帳でも発音記号が記載されていることが多いです。
アクセントの位置もわかる
発音におけるアクセント(強調して発音する箇所)についても発音記号で知ることができます。
アクセントの位置は、「ˈ」このマークで表記されます。
例えば、enough(十分な)という単語は、
イナフ
のように、最初のイではなく、ナの部分を強く読みます。
発音記号を見ると、
/ɪnˈʌf/
このようになっており、「ˈ」の位置から、ナの部分にアクセントがあることがわかります。
発音をカタカナで表記することには無理がある
発音記号は「英語におけるフリガナに相当するもの」と説明しましたが、フリガナならば、こんな記号を使わずともカタカナで表記すればいいのでは?と思われるかもしれません。
しかし、英語の発音をカタカナで正確に表記することには無理があります。
というのは、英語で使われる「発音の種類」は、日本語と比べてずっと多いためです。
英語と日本語で使われる発音の種類を個数で比較してみましょう。
発音の分類方法やカウントの仕方によって数は多少前後しますが、だいたいこのくらいの個数になります。
母音 | 子音 | 合計 | |
英語 | 20個程度 | 24個程度 | 44個程度 |
日本語 | 5個程度 | 20個程度 | 25個程度 |
特に、英語では母音の種類が異常なほど多いことに注目してください。
日本語の母音は、「あ、い、う、え、お」の5個しかありませんが、英語の母音は、こんなにも多くの種類があるんです。
また、子音についても、種類の「数」自体はあまり変わらないかもしれませんが、英語の子音の大半は、日本語で使う発音とは全く異なるものです。
ですので、カタカナでは、どうやっても英語の発音を正確に表現することができません。
ここまでの説明で、発音記号がどんなものか、その概要はお分かりいただけたのではないかと思いますが、
「ああ、そういう記号なのか、なるほどね。」
で終わらせてしまってはいけません。
この発音記号、英語学習において非常に重要なものなんです。
発音記号をマスターしているのとしていないのでは、その後の英語力の伸びが全く違ってきます。
発音記号を学ぶことがなぜ大事なのか
発音記号を学ぶということは、
- 英語で使われる「発音の種類」
- その「発音方法」
を学ぶということです。
発音記号を学べば、英語の発音が上達するのはもちろんですが、リスニングの能力にも大きく影響します。
多くの人が、「英語が聞き取れない」ことで悩みます。
しかし、聞き取れないにしても、どんな音がどういう理由で聞き取れないのか、「聞き取れない原因」をうまく分析できていない人が大半です。
だから、リスニング力を上げるためには、「ひたすら英語の音源を繰り返し聞く」、それしか方法がないと思っています。
しかし、発音記号を学んで、英語の音について詳細に理解すれば、やみくもにリスニングを繰り返すだけでなく、聞き取れない原因を分析して、その原因を一つ一つ具体的に対処していくといったことができるのです。
例えば、リスニングの練習をしているときに
「この単語は聞き取れた、この単語は聞き取れなかった」
ということだけでなく
- 「ʃ」と「s」がうまく区別できていない
- 「əː」の音を聞き取るのが苦手だ
といった、より高精度なことがわかってくるのです。
そして、こういった「聞き取れない原因」は、発音練習を繰り返すことで解決していきます。
聞き取るのが苦手な発音は、意外なことに、聞く練習だけでなく、発音を練習することで聞き取れるようになっていくのです。
うまく聞き取れない発音というのは、基本的に、日本語には無い発音で、それは日本人にとって「未知の音」です。
未知の発音は、音として耳に入ってきても、それを脳が言語として受け付けてくれないような性質があります。だからうまく頭に入ってこず、リスニングできません。
しかし、発音練習して、自分の口でその音を発音できるようになると、未知の発音は、もはや未知ではなくなります。
そうなると、いままで聞き取れなかった発音が自然と聞き取れるようになっていきます。
このように、発音とリスニングは、表裏一体の関係にあります。
そして、発音記号を学ぶことは、発音とリスニング、両方の能力の向上につながります。
発音記号をマスターするには
発音記号を学び、個々の発音を練習することで、
- 発音
- リスニング
どちらの能力の向上にもつながる、ということを説明してきました。
こういう効果があるのですから、発音記号は早いうちに学んでおくに越したことはありません。
そして幸いなことに、発音記号を学ぶには本を一冊学習すれば十分で、割と短期間でマスターできます。
発音記号と発音を学ぶための本としては、「英語耳」がオススメです。
発音記号を学べる本であれば他のものでも問題ないと思いますが、「英語耳」は英語学習者の間で定番になっていて、これを選んでおけば間違いが無い、という類の良書です。
英語学習を加速させるためにも、発音記号を是非マスターしましょう。